私は小学生の頃,田舎にいた.小さな小学校で,私の学年は21名.男7名,女14名であった.
幸せな私は,世の中に女は男の2倍いると思っていた.
そんな私が,転校して,1学級50名くらいで,一学年が5クラスの小学校に移った.
生徒数がどんどん増えている地域で,教室も鉄筋で新しく,戸惑う毎日であった.
使っている教科書も違った.
国語の教科書も変わった.教科書がないので,隣の子に見せてもらっていた.
その時,習っていたお話は,太郎コオロギだった.
詳しくは覚えていないが,たぶんこんな感じである.
田舎の学校に転校してきた女の子が,消ゴムを持っていたのだが,太郎という腕白な男の子がそれを床の節穴から床下に落としてしまう.
悲しそうにしている女の子をみて,太郎がそれを拾いに行くのだが,帰ってくる前に授業が始まってしまう.
心配そうに下ばかり見ている女の子を,先生が咎めた時,女の子はコオロギがいる,と嘘をついてしまう.
先生に問いつめられて困っていると,床下からコオロギの音が聞こえる.
太郎が鳴き真似をしてくれたのである.
という話であったと思う.
田舎の節穴のある床の小学校から転校してきた私には,グッと来るお話であった.