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夢と現と幻と

心に移りゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつくる

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お金 貨幣の事③

ある町に,銀行の支店ができたとする.この町には他に銀行はなく,初めての銀行であった.本店から1000万円が持ち込まれ,金庫に1000万円入っている.
この町にサムという若者が居て,お店を作って商売をしたいと考えた.彼は若く,まだお金は持っていないが,自分には商売の素質があると考えていた.だが,店を出すためには少なくとも1000万円は必要だ.働いて金を貯めるとすると年に100万円ずつ貯めても,10年はかかる.そんなに待っては居られない.そこで,最近できた銀行でお金を借りることにした.銀行の担当者ジェファーソンに事業計画を説明し,1000万円を借りることに成功した.
現在,銀行は,貸し出し(債権)1000万,金庫に1000万円.
サムは,負債1000万,銀行預金1000万である.
その後,サムは建設会社に行き,自分の店を作ってもらう契約を行い,1000万円を建設会社の口座に振り込んだ.
すると銀行は,貸し出し(債権)1000万,金庫に現金1000万円.
サムは,負債1000万,銀行預金なし
建設会社,銀行預金1000万円となる.
建物はできたが,売るための商品を仕入れる必要がある.追加の融資を銀行に依頼し,更に1000万円を融通してもらい,問屋で商品を仕入れ,問屋の銀行口座に1000万円を振り込んだ.
この時,銀行は,貸し出し(債権)2000万,金庫に現金1000万円.
サムは,負債2000万
建設会社,銀行預金1000万円となる.
問屋,銀行預金1000万円となる.
銀行は現金は1000万円しかないが,建設会社と問屋は,合わせて2000万円銀行に預けていることになる.建設会社と問屋が示し合わせて,銀行に行き,現金を全て引き出そうとすると,銀行は現金が足りなくなってしまうが,こんなこと,つまり,銀行が準備している現金より多くの預金を預かっている状態,があって良いのだろうか?
これは,お金 貨幣の事②でゴールドスミスに生じた,金庫の中に入っている金の量は,振出した手形の金額よりも少なくなってしまうことと同じである.現在の世の中では普通の事である.
これを信用創造という.重要な事なのでよく理解して欲しい.
信用創造とは、銀行は集めた預金を元手に貸出しを行っているのではなく、銀行が貸出しの際、借り手の預金口座に貸出金相当額を入金記帳することで、銀行保有のベースマネーといった原資を事前に必要とせずに、何もないところから新たに預金通貨を生み出すことである。この預金通貨は借り手が返済すると消滅する。(ウィキペディア2020/10/11)

この町に入ってきたお金は,現金として1000万円である.しかし,消費としてのお金はサムから建設会社に1000万円,問屋に1000万円で2000万円である.この後,建設会社に従業員にお金を払い,問屋も商品の製造業者や運送屋に支払いをするので,もっと消費される.
つまり,現金は1000万円しかないが,お金の働きは貸し付けを行うことで大きく増加するのである.
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お金 貨幣の事②

17世紀のイギリスで,金匠(金の細工をする職業)が金を受け取ると,同等の金と引き換える事を記した証書(約束手形)を出していた.これがゴールドスミス・ノートといわれている.ゴールドスミスとはロンドンの金細工師で,両替商も営み,貨幣,貴金属の保管や貸し金も行っていた.当初は,振出した手形と,金庫の中の金の量は一致していた.

この手形の行方を見ていこう.手形の持ち主は,金が必要になったり,何か買ったりしたい時が出てくる.この手形の価値を皆が知り,信用されるようになると,この手形を換金せずにそのまま受け取って貰えるようになる.つまり,兌換紙幣として利用されるようになったわけである.こうなってくると,自宅に沢山の金を持っている人は,重たい金は常に持ち運ぶには重く,また,金庫がなければ,盗まれるかもしれないので,ゴールドスミス・ノートに替えて,現物の代わりに手形を持ち歩くようになった子かもしれない.後にイングランド銀行が銀行券(紙幣)を発行することになるが,これはゴールドスミス・ノートがもとになっているとされる.

それでは,手形を振出したゴールドスミスの方を見てみよう.当初は,振出した手形と,金庫の中の金の量は一致していたはずだが,お金を借りたい人がやってくると,利息を取って貸し出しを行うようになる.すると金庫の中に入っている金の量は,振出した手形の金額よりも少なくなってしまう.しかし,やっている事は現在の銀行と同じ事である.
これらの事の起こりは,生じた事象が先であり,法的な貨幣としての資格が決められる前に発生していることが興味深く,重要である.

お金 貨幣のこと①

お金,貨幣のことを書いておきたい.
私の知っているところでは,昔,メソポタミアの文明で大麦の束が,物を買うためのお金として使われていたとのことである.物やサービスを受けるための普遍的な価値として,価値の保存,価値の譲渡に用いられ始めたのである.その後,大麦の束は,長期保存に向かないし,嵩張ることも有り,タカラガイや金,銀がその役割を担うようになっていく.
銀の重さの単位としてシェケルという単語が紀元前3000年頃に使われ始める.ハンムラビ法典の中には”外科医が青銅のメスを使いアウィーレム(上級市民)階層の者に外科手術をしたら銀10シェケルの謝礼を受け取ることができる”と記載されている.たぶん,ジョージ・S・クレイソンの「バビロンの大富豪」のような世界(「繁栄と富と幸福」はいかにして築かれるのか )があったものと思われる.これは,是非一読すべき書籍であると思う.実際,読んでいて面白い.

宋の時代に交子といわれる世界初の紙幣がある.これは,銅の産出が少ない四川地方で使われていた鉄銭の預かり証として始まった.モンゴル帝国では,交鈔(こうしょう)といわれる紙幣が発行されている.紙幣として安定させるために,兌換準備金としての銀の準備が行われ,交鈔の受け取りを拒否したり偽造したりすると死刑とされた.初めは発行量が制限されていたが,徐々に発行量が増加し,価値が低下し,元王朝(大元ウルス)の消失と共に紙くずになった.
元で紙幣が使用されていることを,当時ヨーロッパから訪れていたマルコポーロが東方見聞録に記載している.